蜜月まで何マイル?

    “なしのつぶて”
 


確かに。
素知らぬ顔で通過すりゃあいいもんを、
何でそこでそう来るかと、
何でわざわざ騒ぎになるように持ってくかと、
そこのところを指摘されつつ、
自称・常識人のナミから怒鳴られたよな経緯は山ほどあった。
グランドラインへ入ってすぐの双子岬で、
行く手へ立ちはだかってた大鯨のラブーンへ、
何てことをしてくれたと殴り掛かったのなんかは いい例だろう。
はたまた、
殊更慎重にならずとも、
そこは警戒するのが普通だろと思うよなところで、
そりゃあ無造作な決断を下す船長だったのも枚挙の暇がなく。
それで同じ道行きとなったり仲間になったいい例が、
アラバスタのビビ王女だったり、
その当時は敵方にいたロビンだったりもするわけで。
当人は決して“安請け合い”しているつもりはないらしく、
だがだが、その判断が
後の大ごとに発展した場合が少なかないのもまた事実だ。

  ……ただまあ

それを言うのなら、
善人か悪人かで分ければ、
素行や価値観、信条などなど、
どう見たって利己的だったり我が強かったりいいかげんだったりと。
到底“善人”じゃなさそうな顔触れ、以前からも抱えつつ、
それでも気がつきゃ“英雄譚”を残す活躍を決めている彼らなのだ、
人が悪いというのと悪い人というのは別もんだ…ってことの、
判りやすい(?)実際例…ってところなのかも知れない。

  何たって“海賊”なんだしねvv



     ◇◇


………で、またぞろ迷子なワケである。
いや“剣豪が”じゃあないのだが。
(笑)

 「…うっせぇなっ。」

諸事情あってのバラバラにされ、
そのまま、各自それぞれで切磋琢磨の研鑽を積み、
2年間という潜伏期
(ブランク)の後、
再会を果たした一味は、
まるでほんの数日前に
“じゃあまた”と軽く手を振って別れただけなようなあっけなさ、
するするするっと引き合っての顔を合わせたその末、
相変わらずのドタバタをそれは軽やかに通過して、
懐かしの船“サウザンドサニー号”で合流すると、
追っ手と知己とから見送られつつ、新たな旅路へ旅立った。
前人未踏な部分も多々あるという、
途轍もない海域“グランドライン”の後半戦。
世界を分断している大陸“レッドライン”の向こう側、
別名“新世界”へと至るため、
陸を越えるのではなく、
深海にあるという“魚人島”を経由する航路を選んだ彼らだったが。

  この地にもそれなりに、
  いみじくも深くて錯綜しまくりな歴史はあり。

何も今じゃなくてもよかろうに、
それとも自分たちこそが引き金になったのか、
ご当地の人々の間に生じた、因縁がらみな騒動がどんどんと膨らみ、
良からぬ筋の面々が画策しているらしい何やかや、
そんなもん知るかと蹴散らす途上で、
しっかりといつものパターン、
皆がそれぞれ別行動を取らざるを得なくなり、
そしてそして…

  船長のみの消息がしれない

案じるこたないのは いつものこと。
例えば、2年前のあの頂上決戦のように、
国をも動かすような そりゃあ大きな勢力や権力が出て来ての、
途轍もない規模の騒乱が迫っていようとも。
ナンボのもんじゃと蹴手繰って生還するのが我らが船長だと、
クルーの誰もが、それこそ胸張って言い張れるのだが。

 “なんでこうも、デカイ騒動にばかり縁が出来っかな。”

アラバスタもそうだったし、空島でも然り。
単なる内紛どころじゃあない、
ともすれば、国の歴史レベルの時点へその発端を置くような。
現今の、しかも旅人である自分らには、
手の出しようのないどころか、
コトの真相も知らないような因縁から生じたというような、
そんな大それた騒ぎの渦中へ
飛び込んでいるケースが増えたよなぁと思わんでなく。
合間合間に平和なエピソードもあるにはあるのだが。
退屈で死にそうになるほど、何の動きもないって間合いもあるのだが。

 “それとの相殺ってことなんかな。”

2年前にはなかった傷が、視野を微妙に狭めてくれて。
それでもあんまりキョロキョロはしねぇから、
困るこたぁねぇだろと思ってたんだがな。
気配なら目視以外でも拾える、
殺気なら尚のこと、
あからさまになってない場合の方が多いのだ、
目以外の感覚での方が拾いやすいというもんで。
鷹の目のところで、
多少は…研ぎ澄まして冴えたはずな感覚は、
今のところ支障なく想いを太刀へと伝えているし、
たとい周りが変わろうと、
昔と変わらぬ意識で、態度で、おれたのだけれども。

 “あんの野郎はよ。”

相変わらず、頭目意識が薄いというか。
確かにまあ、
こちとら いちいち指示をもらわにゃ動けねぇ面子じゃあないが、
だったらだったで、でんと構えててくれりゃあいのによ。

 「……………………。」

泰然と立ちはだかりの、
腰の得物、大太刀の柄に手を置き、
悠然としている…ように見えちゃあいるが、
その実、雄々しい肩が、男臭い口許が、精悍で頼もしい腕や手が。

 「気のせいでなきゃあ、落ち着きないんじゃない? 彼。」

 「まぁね。」

過度に心配してはないんでしょうけれど、
傍らにいないってのはどうにも…ってクチの、アレよアレ。
ナミがやれやれと肩を竦め、

 「ああ。犬も食わないってアレ?」
 「…ロビン、判っててワザと斜めに外してない?」

うふふ、そうねvv 馬に蹴られるほうよねと、
楽しそうに微笑った黒髪のお姉様はもとより。
気障なシェフも、臆病が多少は改善されたらしい狙撃の王も、
相変わらずに小さなトナカイドクターも、
船大工のサイボーグさんも、
ソウルキングなんてな
とんでもない仮の姿で世間をたばかってた骸骨の君も、
海流と気象はお任せの航海士さんも、
勿論、三刀流の凄腕剣豪さんも含めての。
仲間うちの皆して、
居なくとも大丈夫な自分らだけれど、
居てくれないと詰まんないと思うところはお揃いな。
とっぴんしゃんな船長さんは、今頃どこでどうしているものか。

 「あのお姫様と一緒なのは間違いないとして。」
 「あいつがついてるならひとます危険はなかろうけれど。
  後腐れだの因縁だの、余計ないろいろを増やしてないかが心配よねぇ。」

頼もしいキャプテンを捕まえてのお言いようとは
到底思えぬ評を重ねる皆だって、
2年離れてたんだからと別行動に慣れたってワケじゃあない。
むしろ一緒に暴れたい、
きっとややこしい事態に揉みくちゃになってるんだろうから、
そこへひょいって現れて、どんなもんだいと鼻を明かしてやりたいくらい。
だから、

  早く追いつかなくっちゃねと

そこのところは同じ想いの皆々を引き連れ、
行く手の彼方をその深色の眼差しにて
真っ直ぐ見やった、剣豪さんだったのでありました。


 「ゾロ〜、そっちじゃねぇぞ〜。」
 「後戻りする気か〜?」
 「何か忘れもんか〜?」
 「ううう、うっせぇなっっ!////////」
←あ





   〜Fine〜  2011.07.22.


  *たまに書きたくなります“船上Ver.”ですが。(たまに?)
   いかんせん、
   本誌を読んでいないので進行状況が判りませんで。
   人間と魚人族の因縁と、
   先代女王を襲った悲劇がベースだった…という、
   今回のシチュエーションも
   いよいよ急を告げてるそうだということしか
   判ってないのが歯痒いですが、
   自分で焦らしてんですもの、しょうがありませんよね。
   ただ、またまた船長と離れ離れらしい剣豪が、
   巻き込まれてる非常事態はどうでもいいが、
   ルフィに早く逢いてぇなくらい思ってそうな気がしたもんで。
(苦笑)


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